2008年2月17日日曜日

読後感想:進化しすぎた脳

本書は、日本の脳科学者が、ニューヨークの高校生を相手に行った最新脳科学の講義内容を本にしたもの。

わたしは脳科学という内容に初めて接したが、少なからず・・・というか非常に興味を引かれた。本の中に出てくる数々のトピックの面白さもあるが、各実験結果に対する「解釈」を非常に深く行っていることに感動を覚えた。最初に結論から聞くと「何で?」と思うことでも、説明を聞いていくと「なるほど」と思わせられる。「心と脳」という分析の難しい内容を扱っているからだろうか?筆者の思考の深さを感じさせられた。また、各トピックの面白さに興味を惹かれる一方、この講義全体でどんなことを伝えたいのだろう?・・・という視点で考えたとき、なかなか筆者の意図が見えず、結果何度か読み返すことになった。非常に内容がある本なので、結果的にそれがよかったと感じている。

大きく5章に分かれており、メインとなる第1~4章は上記の講義内容。第5章は、講義とは別に、著者と脳科学を学ぶ学生たちとが議論する内容となっている。



各章の題名は下記の通り



第1章 人間は脳の力を使いこなせていない

第2章 人間は脳の解釈から逃れられない

第3章 人間はあいまいな記憶しかもてない

第4章 人間は進化のプロセスを進化させる

第5章 僕たちはなぜ脳科学を研究するのか



一応、章ごとに題名が付いてはいるが、講義の内容を文書に落としたものなので、章ごとの題名がその内容を的確に表しているわけではないようだ。


話の内容が多岐にわたるので、チョットずつ紹介&感想を書いていこうと思う。今日はまず第1章について。


第1章の中では、まず筆者から高校生たちに「脳」に対するイメージを質問している。その質問から、「心と脳の関係」に進み、リモコンねずみの研究論文の話、脳とコンピュータとは何が違うのかという話、「何をもってアイデンティティとするか?」という疑問、大脳皮質の6層構造の話、脳の各パーツの機能、「目で見る」とはどういうことか、意思をデータとして目に見えるようにする実験、人間は脳を5%ぐらいしか使っていない話、「心はどこにあるか?」という疑問、・・・という感じで話がめまぐるしく変わる。


各トピックの内容はとても興味深いので、最初に読んだ時にはどんどん読み進めることができた。しかし話が飛びすぎて、各トピックの内容の関連を意識して読まないと、結局最終的に何を言いたいのかがわからない状態であった。(少なくともわたしの場合は・・・)



この第1章で筆者が言いたいことは、「意思とは何か?」という問い掛けだと私は感じた。まず、最初に筆者は現在の脳科学で意志は解明できていないとはっきり言っている。その上で、話を進めている。

「意思とは何か?」を高校生たちに考えてもらうために、リモコンねずみという最新研究のトピックを説明している。いきなり「意思って何だろう?」という問い掛けをしても、考えたこともないものに対しては思考が働かない。だから実験結果を示して高校生に判断する材料を与えているのだと思う。

…で、リモコンねずみとは、電極をねずみの脳に刺して、ある仕組みによってねずみを思い通りに動かすというものだ。 脳に電極をさすなんて怖い実験だと思うけど、最新の脳科学ではそんなことまでできるのかということを知った。

リモコンねずみの仕組みを説明するために、このあと、脳の仕組みをある程度ページを割いて説明している。(ここら辺も興味深い話を簡潔に説明してくれている。)

そして、リモコンねずみの仕組みを説明したあと、再度高校生たちに問いかけている。
「リモコンねずみの動作は意思だろうか?」

これまでの説明から、高校生たちもこのねずみの行動は意思ではない、と感じたようだ。わたしもここまで本を読んできて、リモコンで動くねずみの行動は意思ではないと感じた。

意思を生み出していると考えていた脳であるが、その脳に外部から制御コマンドを送って動きをコントロールすることができてしまった・・・。では、意思とは、心とはどこで存在しているものなのだろうか?たぶん講義を聴いた高校生たちもこの本の読者も同じことを感じたと思う。

そこでつぎに、
 ・ねずみがレバーを押さずに水を飲めるようになる実験
 ・そしてサルに意思で動かすことができるロボットアームを付けるという実験
という2つの実験だ。この2つの実験で意思を目に見える形にすることがでることを説明している。つまり、何らかの動作をしたいと考えたときに、その情報を脳の外にデータとして取り出し、その情報を元にレバーを押したり、ロボットアームを動かすことができたのだ。ということは、やっぱり意思は脳の中にある、と考えて良いのだろう。しかし何処に・・・。

・・・というのが第1章の内容だった。
本当にトピックが面白くて考察内容が深いので、脳に関する情報を得ることもでき、その考察に考えさせられる部分が多かった。第2章以降の感想をまた書こうと思う。




2008年2月3日日曜日

太陽の光で二酸化炭素を分解・太陽炉利用の新技術開発:Garbagenews.com

太陽の光で二酸化炭素を分解・太陽炉利用の新技術開発:Garbagenews.com

年末年始にテレビ漬けになっていたとき、今年はやけに環境番組が多いなと感じていた。
ゴア元副大統領の「不都合な真実」の影響が大きかったのだろう。
バングラディッシュでは海面が上昇を続け、海辺に住む住人が数年毎に山のほうへ引っ越す姿が報道されていた。
原因は二酸化炭素による温暖化。 私たちの生活が豊かになる一方で、その代償として大量の二酸化炭素を放出し、地球の温暖を招いているとの内容だった。
少なからずショックを受けたが、今の我々の便利な生活を全て止められるかと言われれば、それは無理だろうとも感じた。 少なくとも自分について言えば、今の自分の生活は捨てれない。せいぜい無駄に使っている電気を消して、節電するぐらいだろうか?


話は変わるが、今日は土曜日。毎週楽しみにしている機動戦士ガンダムダブルオーの放送日だ。
見終わった後、アニメで出てくる太陽炉というキーワードで検索をかけていたら、思いがけずこの記事がヒットした。
太陽炉とは、太陽の光をレンズで一点に集めそのエネルギーを利用するものだ。
どうもこの装置で二酸化炭素を分解できるらしい。

キーとなるのはウスタイト(FeO)と呼ばれる物質。この物質の還元作用を利用するらしい。

CO2分解の手順としては

①. 大気中でFe3O4を加熱

②. 約2315℃でFeOと酸素に分解

③. 生成されたFeOが安定化しようとして大気中のCO2を分解

という段取りらしい。

通常この処理を化石燃料を燃やして行うと大量のCO2を排出し、本末転倒になってしまう。
太陽炉を利用すれば、CO2放出の心配はないため、この手法が生きてくるらしい。

記事によると1日に約2kgのCO2を処理できるらしい。
実験では1m四方ぐらいのフレネルレンズを用いてFe3O4の資料を加熱している写真が掲載されていた。特に記されていなかったが、この装置で1日2kgを処理できるのであれば、量産すれば温暖化を食い止めるぐらいの処理能力が確保できるのではないか?・・・と期待してしまう。

また記事には載っていなかったが、発表論文ではCO2分解より水素の発生に重点が置かれているようだった。この水素はエネルギー源として利用するのだろう。
素人考えだが、うまく運用されれば「CO2分解による環境保護」「クリーン・エネルギー生成」の両立というすばらしい結果がついてくるように思える。


ところで、原理を調べるとあまりたいしたことではないようにみえるのだが、なぜ今までこの研究が活発に行われていなかったんだろう?